Journal of IPCs vol.44
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-4-令和元年5月より、私は医学情報センター長と医療情報部長を兼務しており、大分大学挾間キャンパスでの学術系のネットワークである学内LANと電子カルテを中心とした病院情報管理システムの管理・運営の責任者として活動しています。医学情報センターと医療情報部の業務は切り離して行うことが困難であり、挾間キャンパスにおけるICT部門としての業務は、医学情報センターと医療情報部が配置されている医療情報部棟が中枢となっています。また、私のもう一つの役割は危機管理であり、病院長補佐(ICT・危機管理担当)、大分大学減災・復興デザイン教育研究センター(CERD)次長、医学部附属病院災害対策室(以下、災害対策室)室長補佐を兼務しています。全国で多発する多様かつ複合的な災害への備えが求められるなか、大分大学ではクライシスマネジメント機構を設置して、CERD、グローカル感染症研究センターおよび災害対策室が組織の枠を超えて活動しており、災害・医療情報を適切に管理・共有するシステムの開発や事業継続計画(BCP)等を推進しています。 災害医療における事業継続計画(BCP)の導入は、東日本大震災を受けて、平成25年9月に「BCPの考え方に基づいて病院災害対応計画作成の手引き」が厚生労働省より各都道府県に情報提供されたことにより進み始めました。その後、熊本地震を受けて、平成29年3月に災害拠点病院におけるBCP策定が義務づけられました。平成30年12月に大分大学挾間キャンパス事業継続計画(以下、挾間キャンパスBCP)を策定し、その後も事業継続マネジメント(BCM)を続け、BCPの見直・改訂を行っています。 そもそも、BCPはあらゆるハザードに対応することが基本となるために、医療情報や情報インフラにおけるBCPすなわちIT-BCPも、BCPの一部とされていますが、サイバーセキュリティ対策などの特殊性があることから、実際にはBCPに組み込まれていることは少ないとされています。 現在の挾間キャンパスBCPに記載されているIT-BCPにかかる項目は、「災害時に電子カルテシステムが停止した場合の対応について、医療情報部への連絡方法、患者情報を参照できる3つのシステム、紙運用について」のみと不十分な状況です。大規模災害時におけるICT部門の最大の使命は、電子カルテシステムを停止させずに、附属病院の機能を維持し続けることである。このため、ここ5年ほどかけて、バックアップサーバの免震棟への移設、サーバールームへのガス系消火設備の設置、自家発電においても長時間にわたり電子カルテ機能を維持できるための準備などを行ってきました。 昨今の大阪急性期・総合医療センターやつるぎ町立半田病院のランサムウエア被害報告を鑑みて、サイバーセキュリティへの関心が大きくなり、IT-BCPの重要性が高まっています。IT-BCPを含むBCP推進には大きな予算の確保だけではなく、CSIRTなどの実効的な組織体制作りが重要であり、挾間キャンパスのICT部門として災害対策やBCPを進めているところです。情報インフラは、極めて重要なライフラインであり、その確保は災害対応の成否に大きく係わります。情報インフラを途絶させないように、大分大学全体でIT-BCPを推進して行く必要があると考えています。 ~~ BCPととIT-BCP ~~ 学術情報拠点副拠点長(医学情報センター担当)■下村■剛 医医学学情情報報セセンンタターーのの課課題題ににつついいてて ▎巻 頭 言

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